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管理人の柿門です。(。・(エ)・。)ノ
今回は、「棋書の紹介その41(落日の譜 雁金準一物語)」をご紹介いたします。
著者:団鬼六 筑摩書房
資料としても貴重な小説
この小説は、江戸から明治に時代が変わり、家元制度が崩壊してからの碁界の歴史が読み取れる貴重な資料ともいえます。
本因坊家の衰退、方円社の誕生と衰退、裨聖会の誕生など、私が知りたかったことが山ほどあり、一気に読むことができました。
焦点として描かれているのは、「本因坊継承問題」
秀栄の父、秀和、そして、秀栄も跡目をはっきりとさせなかったことがそれぞれ、継承問題を起こしたというように私は解釈しておりました。
秀栄亡き後の最強棋士が、田村保寿であり、当時、田村に先で勝負になる相手がいなかったので強者の理論でいけば、本因坊継承はすんなりと田村になるはずなのですが、田村には、あまりにも人望が無さ過ぎました。
雁金準一は、秀栄に本因坊としての気品と風格があると認められており、また、坊門においても彼を押す者が多数でした。
本因坊秀栄と弟子の田村保寿とは、仲が悪かったとは聞いておりましたが、これほどまでとは思ってもおりませんでした。
未完の小説
この作品の執筆は、十余年にも及びましたが、団鬼六先生が執筆途中にお亡くなりになられてしまい、この「落日の譜 雁金準一物語」は、裨聖会(ひせいかい)の誕生までの未完に終わっております。
この後の雁金準一先生の物語も気になりますので、残念であります。
伊藤博文公
雁金少年が13才の夏、箱根の旅館で湯治客相手に囲碁の相手をしていたところ、偶然にも、後の内閣総理大臣となる伊藤博文と1日に10局ほど飯を食う間も惜しぬほど打ち続けることとなりました。
その後、伊藤博文に目をかけられるようになり、囲碁担当書生として伊藤博文邸に住み込むこととなります。
日清戦争が勃発する直前に大本営(日本軍の最高統帥機関)を広島へ移すということで、明治天皇が文武百官(すべての文官と武官、もろもろの役人たち)を従えて新橋駅から出発することになり、伊藤博文もこれに従い、伊藤博文の随行員のひとりとして、雁金少年も選ばれました。
とても名誉なことであり、雁金少年の両親はとても喜んだとのことです。
伊藤博文公は、棋力はそれほどでもなかったようで、いわゆる「下手の横好き」であったようです。
囲碁をとおして、政治家として状況判断力を培ったようでもあります。
3年間務めた書生を辞めるにあたって、伊藤博文公は、月々の報酬が5円である雁金少年に3年間の指導料として、100円と色紙を手渡しております。
「これは別れる友に酒をすすめる詩だ。わかるか、準一」
「花ひらいて風雨多し、いつかお前も花の咲く時期が来るだろう」
「しかし、雨や風にひらいた花が打ちしごかれることもある」
「そして、今日の俺とお前のように人生には悲しい別れの日がくるということだ」
伊藤博文公は、雁金準一の六段昇段祝賀会時にも、直筆の五言絶句の詩が入った扇子を手渡しております。
登場人物
登場人物は、明治、大正時代の棋士、村瀬秀甫、安井算英、本因坊秀栄、土屋秀元、中川亀三郎、巖埼健造、石井千治、田村保寿、雁金準一、野沢竹朝、関源吉、高部道平、瀬越憲作、鈴木為次郎等々。
小説とはいえ、それぞれのキャラクターはとても興味深いものでありました。
(注:「棋士」は昭和になってから定着、当時は、「棋客」「棋家」)
最後に大正9年から10年にかけて(打掛け13回)行われた対局をご紹介いたします。
本因坊秀哉名人と雁金準一の因縁の対局です。
田村が本因坊を襲名し、雁金がその後、一切の手合から遠のいて14年後の対局です。
雁金はその間、素人集とのけいこ碁で生計をたてておりました。
この対局は、主催した細川護立侯爵のお好み碁として、棋譜は秘されたままでしたが、約40年後の1963年「雁金純一打碁選集」(瓊韻(けいいん)社発行)で初めて棋譜が公開されることになりました。
14年ぶりの真剣勝負
1920-03-12から1921-01-31、打掛け13回、細川護立邸
先:雁金準一、本因坊秀哉名人
「黒25,白28、さらに黒29と打ち込み合って先端が開かれたが、黒33、37が厳しく、黒43と制しては黒が満足できる分かれだろう」
「ここからは雁金の地に足のついた堅実さと、本因坊秀哉名人の上段に構えた中央作戦が好対照をみせる」
と高木祥一先生の解説であります。
実戦図:白94まで
棋譜再生
実戦図:白94まで
「白54から58が秀哉独特の中央経営策。白72のツケも鋭く、コウの犠打によって中央をまとめようとする。黒93は、94にノビ切ったほうがまさったかもしれない」
と高木祥一先生の解説であります。
実戦図:白136まで
実戦図:白136まで
「白94から白118となっては中央が大きい。しかし、黒119、黒123と鋭さでは雁金も負けない。黒127と進出して、わずかに黒リードか」
「白128には受けられず、黒129以下が当然。ここを放置して白136からコウを挑んだのが秀哉名人の勝負手だった」
と高木祥一先生の解説であります。
高木祥一先生のコメント
「この碁は内容がすばらしい。争碁とか大勝負は力が入りすぎるためか、着手に伸びを欠いたり、見損じがあったりで、けっこう凡戦が多いものだが、この碁は別である」
「気合が正面からぶつかり、血の吹き出るようなすごみを感じさせ、しかも指摘できる悪手がほとんどない名局である」
と高木祥一先生のコメントであります。
この碁は254手まで打たれ、黒番の雁金準一六段の6目勝ちとなっております。
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