黒:一力遼、白:謝科
いまだ興奮冷めやらぬ、一力さんの世界戦優勝ですが、その優勝を決めた一局に珍しく「空き三角」が3つも登場いたしました。
「空き三角」は愚形の王様と言われております。
愚形の空き三角も、状況、局面によっては、ありだということですね。
優勝の余韻に浸りながら振り反ってみましょう。
第10回応氏杯世界選手権 決勝五番勝負の第3局(2024年9月8日)より
黒:一力遼、白:謝科
第一の空き三角
実戦図:黒37まで
棋譜再生
実戦図:黒37まで
黒番の一力さんが黒37と打ちました。
これが「空き三角」と呼ばれる愚形の王様ですがこの場合は、仕方ありません。
白34の石をシチョウで取れれば、よいのですが、左上隅に白が待ち構えているので、シチョウは成立いたしません。
柿門の勝手ヨミ
黒37の参考図
棋譜再生
黒37の参考図
私などは、何も考えずに上図の黒37と一間トビすることでしょう。
白38を待って黒39とタケフの好形を勝手ヨミいたします。
白38が勝ってヨミでした。
白38が急所
黒37の一間トビには、白38が急所です。
黒39から脱出はできましたが、白44で種石の黒二子が取られてしまいます。
一力さんが打った、黒37の空き三角は、盤上この一手だったようです。
絶芸の手順と完全一致
黒37の空き三角から白46まで、絶芸が示した手順とずばり一致しております。
白40のトビは見事な手筋ですね。
第2の空き三角
黒3子は種石ですから、取られるわけにはいけません。
黒67の空き三角はしかたないところです。
急所の白68
上図の黒67の一間トビは、白68でギャフンです。
実戦の黒67の空き三角は、取られないための絶対の一手でした。
第3の空き三角
一力さんは、黒105と空き三角に打ちました。
当然、絶芸の手と一致しています。
この空き三角は、深いヨミの裏付けに基づいたものでした。
しかし、プロの碁で空き三角が現れることじたい珍しいのに、その空き三角を3度も打つことになるとは、一力さんにとっても初体験でしょう。
シチョウの証明
黒105の参考図
黒105の参考図
黒105では、通常は上図の黒1の一間トビが形とされております。
しかし、この場合、白2の出に対して、黒3と押さえると白4から、ものの見事にシチョウの大技が炸裂いたします。
このシチョウを避けるために、一力さんは、実戦の黒105と打って白のダメをつめたものでありました。
深いヨミに基づいたダメツメ
白108アタリに黒109が愚形ですが、一力さんは真ん中の白を本気でトリに行っています。
白116の出に黒117と押さえこみます。
白118と切られても、空き三角を打ってダメを詰めていたおかげで、シチョウで取られる心配はありません。
黒121と完全に白を包囲しました。
真ん中の白に二眼はありません。
外側の黒に大事がなければ、真ん中の白は取られです。
しかし、その後、勝負は二転三転いたします。
「空き三角も時によりけり」
局面の状況に応じて、形にこだわらず最善手を放つ一力さんの記憶に残る一局となりました。
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