棋書の紹介その16(闘将、林海峰)

2023/07/18

02.棋書の紹介

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*初めにお断り
初めにお断りしておきますが、囲碁の本は、有名作家の小説にようにベストセラーになることはありません。
購買層が限られておりますので、出版してしばらくすると絶版になってしまいます。
ゆえに、ここでご紹介した棋書もすでに書店の店頭にはないかもしれません。
その点はご了承をお願いいたします。


  闘将・林海峰」著者:林海峰九段 誠文堂新光社

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林海峰先生は、初めて一流棋士と二日制のリーグ戦にて対局できることが大変うれしかったとあります。時に21才。
二日制のリーグ戦の最初のお相手が、木谷実先生で、林海峰先生にとって忘れられない1局となりました。
そして、木谷先生との対局はこれが最初で最後となっています。

第3期 旧名人リーグ、1963年10月2日
黒:林海峰(七段)、白:木谷実(九段)(コミは5目です。)

黒:林海峰、白:木谷実


棋譜解説(数字、記号入り)
棋譜解説(数字、記号入り)

まるで現代碁のよう

(左図:黒29まで)
コミは当時5目でした。ジゴ(同点引き分け)の場合は、白勝ちのルールでした。
コミが5目だとAIの一手(無料のAI)は、何も打たない状態で黒が1.2目リードしていました。
黒29まで全くの互角の進行です。

*林海峰先生の解説
徹底的に実利を稼いで、あとで相手の模様にとびこむというのが木谷先生の棋風。
この碁でも序盤は徹底して地を稼いでいる。
特に白14のツギは先生の十八番で、同様の実践例が多くみられる。

60年前の対局ですが、ここまで現代碁と言っても誰も疑わないと思います。
林海峰先生が指摘しているように白14のツギは、当時木谷先生以外では、打たれることがなかったようです。
白14のツギは、最近になって打たれるようになりました。
木谷先生の棋風は当時、異質のように感じられていたようですが、現代を先取りしていたのかもしれません。

最高評価は神の一手

(右図:黒63まで)

*林海峰先生の解説
白36のツケは調子を求めて右辺を荒らす作戦で、この場合は有力。
対する黒37も、中央の厚みとの幅が良く、こう打ちたいところ。
ただし、黒41では白36の左にハネ、外側に厚みを築く方が勝っていた。

白36のツケも現代風です。
当時は、38にツケる手の方が一般的であったと思います。
対する黒37も私もこう打ちたいと思いました。
林海峰先生は、黒41を反省されていらっしゃいますが、AIの一手(無料のAI)は、実戦の黒41を最善手と称賛しております。

AIの一手(無料のAI)は、5段階評価で一番上が「AIの一手」となっておりますが、実はその上がありまして、それが「神の一手」です。AIの一手以上とあります。
自分の碁では出現することがなかったので気がつきませんでした。
黒29が「神の一手」でした。

黒63までのAIの一手(無料のAI)の評価は、黒1.1目リードですので、1手目から全くの互角の進行と言えます。素晴らしい内容です。

棋譜解説(数字、記号入り)
棋譜解説(数字、記号入り)

公式どおりのお手本の消し

(左図:黒101まで)

*林海峰先生の解説
白64は機敏。先に黒66とコスむべきところで、黒の権利だった。
黒としては白76とポン抜かせたのも疑問。黒75では76とツグべきだった。
白78とケイマされては、細かいながらも黒が形勢を損じてる。

木谷先生の白70は、消しのお手本のような見習うべき一手です。
白70は、黒29と黒57の直線上にあり、深すぎず、浅すぎずで、公式どおりの一手となります。
林海峰先生は、黒75を反省されていらっしゃいますが、AIの一手(無料のAI)によれば、実戦の進行で問題なしとのことです。
白78とケイマされた時点での評価は、黒0.9目リードとありましたので、全くの互角の形勢であります。

勉強になる棋譜

(右図:黒147まで)

*林海峰先生の解説
白140のコスミが見損じ。黒141とハネ出されて、白は持ち込みになった。
形勢逆転。黒147と一子を抜いて黒の勝ちに。

白140では、AIの一手(無料のAI)は146を示していました。
それ以前の形勢はずっと1目内くらいで動いていたのですが、この辺りでは、黒の2目から3目勝ちは変わらないような参考図ばかりでした。
とは言え、見どころの多い熱戦譜でありました。

現代の難解な戦いばかりの棋譜より、60年前のこの棋譜を並べる方が、アマチュアにとっては、よほど勉強になります。

  • 総譜は、こちらより、つぶや棋譜2 Viewerで、ご確認ください。
  • つぶや棋譜2 Viewer左上にある「自動再生」にチェックで再生致します。
  • つぶや棋譜2 Viewer碁盤の下にある「NUM」で手順が表示されます。

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