著者:小林光一九段 ユージン伝
九子局から六子局までは超スピードで通過しても、五子局に出世するとパタっと止まるケースが多い。
置碁において、一子の差で最も違いがあるのが、六子局と五子局の間と思われます。
六子局には三連星が二本もあり、置いただけで勝てそうな気がしますが、五子局になると、置石がバラバラで、とても勝てそうもないという人が多い。
しかしながら、五子局はまだ黒が絶対優勢だということを忘れてはいけません。
六子局をもって子供の世界を卒業し、いよいよ大人の世界に入ったのですから、これを機会におおいに勉強して置石を減らし、教わる立場から対等のパートナーへと出世しようではありませんか。
1980年1月 小林光一
本書は、日本棋院出版のポケットシリーズと同じ大きさですので、気軽に読めます。
本書は三部構成となっており、第1章が小林流の五子の布石と題して、第1型から5型まで五子局における序盤の打ち方を小林先生が解説されています。
第2章は先人の五子局に学ぶと題して、本因坊道策の有名な五子局と本因坊秀哉の五子局が紹介されています。
第3章はプロに挑む鳳雛(注:ほうすう:将来すぐれた人物になることが期待される子供)と題して、呉清源、鈴木圭三(数え10才)と本田幸子、大代まき子(11級)の二局が紹介されています。
犬養木堂と本因坊秀栄
全部はご紹介しきれませんが、犬養木堂と本因坊秀栄のやりとりで、タイトルは、「碁の教わり方」と「上達に抜け道なし」です。
木堂を調べてみると後に首相となる、犬養毅さんの雅号(注:がごう:画家・文筆家などが、本名の他につける風流な別名。)でした。
秀栄名人の言行録より(注:調べてみると年齢は秀栄が3つ上でした)
あるとき、犬養木堂爺が秀栄先生に向かい、「どうだい、本因坊。ワシもこれから一生懸命やれば、二、三目も上達できるかな」
ときに、木堂は秀栄に五子ほどの碁、二目も上達したらプロ級になってしまいます。
秀栄、ジっと木堂の顔を正視して、「できるもんですか」と、まじめな返答。
「そりゃ、またどういうわけだ」
「私などは、これでも命がけで勉強してきたのです。それでさえ、なかなか上達しないのになぐさみ半分にやって上手になれたら、碁打ちはメシの食い上げです。」
小林光一先生は次のようにこのコラムを締めています。
「棋書を読んで勉強したらその瞬間は強くなっていますが、瞬間的に得たものは、次の瞬間に忘れることが多いのを我々は知っています。
いかにして瞬間的なものを恒久的なものにするかということですが、これはやはり、秀栄先生のいわれるように本気で取り組むしかありません。
強烈な努力
藤沢秀行先生の有名なことばをご紹介いたします。
「これだけは伝えたい。」「強烈な努力が必要だ。」「ただの努力じゃダメだ。」「強烈な、強烈な努力だ。」
「ヘトヘトになるまで、猛練習をした。」と人はいいますが、我々の練習は、ヘトヘトになってから始まるのです。
その道の第一人者の言葉は重みがあります。
紹介するのは、五子、小岸壮二(12才)、本因坊秀哉名人です。1911年春
何も知識がなかったので、小岸壮二さんをWikipediaで調べてみました。
秀哉名人の秘蔵の弟子で本因坊跡目が、ほぼ決まっていたとのことでした。
1923年、関東大震災で中央棋院が全焼し復興に努めていた中で、疲労と腸チフスで倒れ、翌1924年1月に27才で夭逝。(ようせい)
時事新報の勝ち抜き戦で32連勝の記録が有名。長考派で重厚沈着な碁風。
1915年から19年までの総戦績は、115勝23敗2ジゴ。その後も1923年まで勝率9割の成績を残した。とあります。
勝率9割は、どの時代であっても、また、どんなジャンルにおいても、そう簡単にできるものではありません。
五子、小岸少年、本因坊秀哉名人
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黒16と一番厳しく攻めてきました。
目の前の名人に白23と打たれたら、私だと、黒2子の足がすくんで身動きが取れなくなると思います。
しかし、現代のネット碁だとそれがありません。ネット碁であれば、いつものびのびと打てます。ネット碁の長所であり、また長所は短所でもあります。
(左図):白49まで、(右図):白81まで
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まぎれを求めて
黒48まで、左辺の白8子は取りましたが、左上隅は白に取られてしまいました。
AIの一手(無料のAIソフト)の評価は、黒60目のリードです。
白がポイントを上げてるかと思えば、そうでもなかったようです。
一段落して、白49のツけ!
「巧い!」って叫びそうな身軽な手です。
私がいうのも失礼ですが、秀哉名人は、置碁が上手です。
そして、白81と今度は右下に転戦です。
ここまで、白がとてもうまく打っているように見えますが、形勢としては、序盤からの五子のリードを黒はしっかりとキープしています。
(左図):白97まで、(右図):黒138まで
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(左図)
荒々しい剛拳の田村(秀哉)に対し、に柔の拳でヒラリとかわす秀栄という対局スタイルで2人の名局が残っています。
右下隅での折衝で、白は、難解な戦闘へと引きずり込みました。
翻って、黒は、白81の三々入りに対して、普通に黒83と受けていれば、まぎれる余地がほとんど無かったと思います。
白85のキリが強手でした。
小林光一先生の参考図
(小林光一先生の参考図)
黒1、黒3としっかりと根拠を確かめていれば、以前、黒優勢とのことです。
この方が分かりやすいです。このあともまぎれることもなさそうです。
実戦は、下辺の石を生きた代わりに中央が荒らされて、黒が投了しました。
投了の局面では10目ほどの差だということです。
この碁は、193手まで打たれ白の中押し勝ちとなっております。
小林光一先生は、最後に次のように述べられています。
目先の1勝はともあれ、大きく伸びるにはこうでなければなりません。
欲をいえば、序盤は一層きびしく打つこと。
これが終盤で味良く店じまいをする余裕を生むのです。
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