


白:秀甫、黒:秀栄
十番碁第2局、白:秀甫、黒:秀栄
明治18年(1885年)1月18日、方円社にて、秀栄の定先
過去記事にて、本因坊秀策、秀甫の十番碁をご紹介いたしましたが、その十番碁から約23年後に、秀甫、秀栄の十番碁が実現いたしました。
時に秀甫は47才。秀栄は32才。
秀栄は、秀策、秀甫の師匠である、本因坊秀和の次男です。
秀栄は、林家の養子となり十三世を継ぎましたが、十五世本因坊の長男の秀悦の急死、十六世本因坊の三男の秀元の実力不足などがあり、林家を絶家として、十七世本因坊に就くとともに方円社の秀甫を訪れ、十番碁を申し込みます。
秀甫は八段(方円社の八段)、秀栄は五段ながら定先で立ち向かいます。
しかし、この二人、12年ほど前には、年齢差はあるものの2人で美濃、尾張、伊勢などを遊歴し、あまりの放埓に宿賃に窮し人質になった逸話があるとのことで、元々は仲が良かったものと思われます。
まるで、落語の「居残り佐平次」のようですね。
十番碁第9局終了後、秀甫が第一人者であるのは明らかとして、秀栄は、宗家として秀甫に八段を贈り、同時に十八世本因坊を譲りました。
十八世本因坊となった秀甫は、即日その名において秀栄に七段を進めました。
生涯の夢が叶った秀甫は、それはそれは喜んだとのことです。
「ひと戦(いくさ)して隈(くま)もなし竹の月」と詠んだ秀甫は、最終の第10局の2か月後に亡くなりました。
十八世本因坊として残した棋譜は、十番碁の第10局のみでありました。
その第10局は「絶局」としても有名であります。
十番碁の成績
【十番碁の成績:秀栄の定先】
秀甫、秀栄ともに早打ちで、この十番碁はすべて一日で打ちきったとあります。
十番碁第2局:秀甫8目勝ち
十番碁第3局:秀甫2目勝ち
十番碁第4局:秀甫4目勝ち
十番碁第5局:秀栄3目勝ち
十番碁第6局:秀甫中押し勝ち
十番碁第7局:秀栄7目勝ち
十番碁第8局:秀甫2目勝ち
十番碁第9局:秀栄12目勝ち
十番碁第10局:秀栄4目勝ち
大斜ハズシ定石
実戦図:黒17まで

棋譜再生
実戦図:黒17まで
黒5まで、右下左下隅が空いています。
現代では、分かりやすく空き隅への先着の方がよいとされていますので、私たちはアマチュアは、黒1、白2、黒3、白4までは隅を打ち合いましょう。
黒7と大斜にかけます。
白8からは大斜定石ハズシです。
白16まで、この定石は現代でも通用するりっぱな定石ですが、この局面であれば、白16で空いている左下隅に向かう方が良いと思われます。
黒17と空いていた左下隅に先着した黒が少しポイントを上げました。
大きなポンヌキ
黒21は現代では、白18の左にペタっとツケる手が流行しています。また、36まで足を伸ばしても良いかと思います。
白32、34のポンヌキは大きく、黒35は少し甘かったようです。
黒37とシマリの大場に回れましたが、白が差を少しずつ詰めております。
上下の白の根拠を確認
白42、44と一間トビ。黒45は上下の白を狙っています。
白46から上辺の白のサバキを目指します。
白48、白52、白56、白64、白66と見事なサバキです。
白70ツギは、現代流だとB9へコスミでしょうか。
黒71は下辺白3子を狙っています。
白76は脱出の手筋です。
白88から、白92とまず、下辺白の根拠を確認しました。
そして、白96と上辺白の根拠を確認しました。
白はじわじわと差を詰め、ここで形勢不明となりました。
中央重視の白98
黒97(S4)ツケは、ご機嫌伺いです。
秀甫は、白98と外から受けました。
隅は手残りになりますが、中央の黒を狙っています。
黒107から隅に手をつけていきます。
白114で118なら眼を奪うことはできましたが、黒114と下がられると左側の白の眼がとたんに怪しくなってきます。黒121まで隅で生きることに成功しました。
その代償に白122から全体の黒を攻めます。
中央全体の黒の眼がはっきりしていません。
黒159は、必死のコウです。黒はこのコウをツグことはできませんから、一手ヨセコウのようなものです。
秀甫は白168とあっさりとコウを解消いたしました。
次に下辺の黒4子トリを見ていますので、いわゆる勝ちました宣言です。
この対局の棋譜は200手まで残っており、白番の秀甫の8目勝ちとなっております。
十九世本因坊秀栄は、偉大な大名人と称されていますが、秀栄が強くなったのは、40才を過ぎてからからでした。いわゆる晩成型で、この十番碁当時は、秀甫に定先を保つのがやっとだったようです。
近代非凡人三十一人
ところで、歴史の教科書に登場する中江兆民(東洋のルソー)の著書「一年有半」(明治34年発行)の中で「近代非凡人三十一人」を選出しております。
「余近代において非凡人を精選して、三十一人を得たり」
31人は次のとおりです。
藤田東湖、東京亭猫八(物真似)、紅屋勘兵衛(三味線)、坂本竜馬、麗々亭柳橋(落語)、竹本春太夫(三味線)、橋本左内、豊沢団平(三味線)、大久保利通、杵屋六翁(勧進帳を作曲)、北里柴三郎(生物学者)、桃川如燕(講釈)、陣幕久五郎(相撲)、梅ケ谷藤太郎(相撲)、勝安房(勝海舟)、三遊亭円朝(落語)、松林伯円(講釈)、西郷隆盛、松永和楓(長唄)、常磐津林中(浄瑠璃)、岩崎弥太郎(実業家)、福沢、越路太夫(三味線)、大隅太夫(三味線)、市川団洲(歌舞伎)、村瀬秀甫(囲碁)、市川九女八(歌舞伎)、星亨、大村益次郎、雨宮敬次郎(実業家)、古川市兵衛(実業家)
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