棋書の紹介その20(秀策、日本囲碁体系第15巻)

2023/08/19

02.棋書の紹介

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*初めにお断り
初めにお断りしておきますが、囲碁の本は、有名作家の小説にようにベストセラーになることはありません。
購買層が限られておりますので、出版してしばらくすると絶版になってしまいます。
ゆえに、ここでご紹介した棋書もすでに書店の店頭にはないかもしれません。
その点はご了承をお願いいたします。


  秀策」日本囲碁体系第15巻

解説:石田芳夫九段、執筆:田村竜騎兵 筑摩書房


本書まえがき

*石田芳夫さんのまえがきの要約
徳川囲碁史を通じ、「碁聖」の尊称をもって呼ばれる人が二人いる。
四世本因坊道策と十四世本因坊跡目の秀策である。
俗に道策を前聖、秀策を後聖と呼ばれている。
道策は大名人である。理論的碁法の創始者として、周囲をことごとく打ち伏せ、誰からの文句も出ずに名人碁所に就き、60才近い天寿を全うした。
だが秀策は、名人どころか段位は七段にとどまり、十四世本因坊秀和の跡目のまま、34才の若さで病没しているにもかかわらず、人々は秀策を呼ぶのに最高の尊称である「碁聖」をもってしてあやしまない。
秀策は碁聖の名にあたいする実力と高潔な人格の所有者であった。その強さはお城碁19戦全勝の記録を示せば、説明の要があるまい。
お城碁は囲碁四家の当主と跡目、それに七段以上という当代最高の打ち手が出場し、将軍の上覧に供する最高の場である。
お城碁を務めることは、碁打ちたる者の終生の念願であり、だからこそ、一門と自身の名誉をかけて戦いが展開されるお城碁で不敗だったというのは驚異の大記録といわねばならない。
一・三・五の秀策流の布石は、秀策の創案になるものではないが、秀策が愛用し、その優秀さを確認させたので、秀策流といって差しつかえない。
秀策流の布石の骨子は、局面を簡明化し、先番の功を確実に維持させるところにある。先番でも白番でも、秀策は簡明にわかりやすく勝った。
これで勝てると見れば無理をせず、一番わかりやすい手を打つ。棋理に明るく大局観にすぐれていればこそ可能な技である。


私が神田神保町のアカシヤ書店で初めて購入したのが、この本となります。

アカシヤ書店には、囲碁将棋の古書がたくさん並んでいます。

この本には、秀策の棋譜が27局紹介されています。


先:村瀬秀甫、本因坊秀策、1861年9月29日、十番碁第6局

手合は定先、5局目までの成績は、秀策の1勝3敗1ジゴでありました。


先:村瀬秀甫、本因坊秀策

(左図):実戦図、(右図):秀甫の解説
棋譜解説(数字、記号入り)
棋譜再生
棋譜解説(数字、記号入り)

(左図)
実戦の進行です。白12は、白20からの動き出しを狙ってるとのことです。

目外しに対しての黒15(E4)の高いカカリは、現代では見られなくなりました。

左図最終の黒23の一間トビに対しての秀甫の解説が右図となります。

秀甫は明治時代に方円社を設立し、機関紙の囲碁新報にて、秀策や秀和との対局の解説をしています。


(右図)
秀甫の参考図となります。

黒23と押さえると、図のような進行が予想され、隅をえぐられたうえ、白Aのノゾキからの攻めがいやらしいとあります。石田芳夫先生も秀甫の評は的を得ているとしています。

この白20からの動き出しは、なかなか面白いですね。機会があれば、実戦で使ってみたくなりました。


(左図):実戦図黒59まで、(右図):黒59の参考図
棋譜解説(数字、記号入り)
棋譜再生
棋譜解説(数字、記号入り)

秀甫の自評

(左図)
実戦の黒59(M10)に対しての秀甫の自評は次のとおりです。

「黒59は少しぬるい。この手は右図のように黒59(B5)にツケるべきで、そうでないと大勢に遅れる恐れがある」としています。

実戦の黒59(M10)は悪い手ではありませんが、黒59までの形勢は、AIの一手(無料のAIソフト)によると黒が3.7目リードと少し差が詰まってきました。


(右図)
黒59以降の参考図は、石田芳夫先生によるもので、打ち込まれる前にツケて見る時期だとのことです。

(左図):実戦の進行図、黒63まで、(右図):私の参考図
棋譜解説(数字、記号入り)
棋譜再生
棋譜解説(数字、記号入り)

(左図)
実戦の進行です。白60の打ち込み対して、黒61とツケました。白62のぶつかりに黒63と立ちました。

黒63は左辺を大事にしたと思われますが、違和感がありました。


生意気な参考図

(右図)
こちらは、私の参考図です。普通は、黒63だと思います。

白が遮断するつもりであれば、白68(B8)に切り込むと思います。

そうであれば、このような進行になるかと。黒73のキリが入れば黒は戦えると思いますがいかがでしょうか?黒71と白1子取らずに、73とキルのもあるかもしれません。


(左図):白92まで、(右図):白96まで
棋譜解説(数字、記号入り)
棋譜再生
棋譜解説(数字、記号入り)
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秀策の妙手

(左図)
左辺に打ち込んだ白石が、攻めはくらいましたが、白92までなんとなく、ほっと一息の感があります。

石田芳夫先生によると白74のコスミから白76、78がうまい手で、白は着々と形をつくった。とあります。

ここまでの形勢は、AIの一手によると黒0.6目リードとなっておりました。

白がじりじりと追い上げてきています。


(右図)
以下は、秀甫の自評です。

「白96と隅にツケたのは妙手である。黒97と打って振りかわったのは少し損で、このためついに黒は3目負けとなった。97ではR4(96の一路上)と受けて辛抱すべきであった。」


黒97と辛抱した時の石田芳夫先生による参考図 棋譜解説(数字、記号入り)

黒97と辛抱した時の石田芳夫先生による参考図です。白100はP3(105の一路上)

このような進行になり、白106のハネ出しに反発できず、黒107と屈服しなくてはならないので、実戦の黒97とがんばったと石田芳夫先生の解説です。


黒161(P8)まで
棋譜解説(数字、記号入り)

黒161(P8)まで、前図の黒97とハッてからの振りかわりがひと段落しました。

以下は、石田芳夫先生の評です。

「一本シンの通った打ちっぷりは、大変力強く、秀甫の力量が高い水準にあるのを実証している。しかし、秀策の打ちまわしにはわずかに及ばず、劣勢である。」

黒161までAIの一手(無料のAIソフト)の評価は、白1.1目リードでした。

この碁は261手まで打たれ、白番の秀策の3目勝ちとなっております。


*本書より
秀策、秀甫の十番碁の成績は、秀策3勝、秀甫6勝、1ジゴであった。
第10局の10日後に秀策はお城碁を2局打ち、それ以後の棋譜は残されていない。
秀策がこの世を去る1年前、すこぶる元気で打ち盛りのとき、十番みっちり胸を借りられたのは、秀甫にはこれ以上ない幸運というべきであった。
たのもしき後輩は、卓越した手腕をもって、動乱の中を生き抜いて行く。


  1. 総譜は、こちらより、つぶや棋譜2 Viewerで、ご確認ください。
  2. 手順は、図の左下にある青文字の「棋譜再生」でご覧いただけます。
  3. つぶや棋譜2 Viewer左上にある「自動再生」にチェックで再生致します。
  4. つぶや棋譜2 Viewer碁盤の下にある「NUM」で手順が表示されます。

最後までご覧いただきありがとうございました。
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囲碁とは黒と白が交互に打って、自分の陣地の大きさを競うゲームであります。碁盤の目は361あり、黒白交互に打つと10の360乗ものパターンがあり、無限の世界と言われております。また、囲碁は、礼節を重んじ、礼に始まり礼に終わる競技でもあります。私はネット碁を楽しんでおりますが、ネット碁のおかげで囲碁は世界中に広まり、世界中で楽しまれるようになりました。囲碁に国境はありません。そんな囲碁の魅力や楽しさを少しでも伝えることができればと考えております。

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