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管理人の柿門です。(。・(エ)・。)ノ
今回は、「棋書の紹介その42(小林流、必勝置碁(四子局))」をご紹介いたします。
著者:小林光一九段 ユージン伝
四子局は、「四本柱」
江戸時代には、時の名人に四子で打てると、初段(当時はプロとアマの区別はありませんでした)の免状が貰え、日本全国を武者修行して歩くときに、その免状が関所の通行手形の代用として通用したそうです。
ですから時の一流プロに対して、四本柱の一本を外して三子になったりしたら、もうれっきとした専門家だったのです。
現代では、プロに四子で打てると立派な五段です。
「五段などとはとんでもない。わしは50年も打っているがまだ一級じゃ。」
という方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、置き石の正しい活用法を会得しさえすれば、四子も置いたなら、たとえプロに向かっても好勝負ができるはずです。
別の言い方を致しますと「碁を覚えたほどの人が、少し本気になれば、どなたでもアマ五段くらいにはなれるはずである」となるのですが、私は決してこれを極言(きょくげん:極端な言い方)とは思いません。
1980年2月 小林光一
本書のサイズは日本棋院のポケットシリーズと同じ大きさなので電車の中でも読めます。
本書の構成は、第1章、第2章、第3章とあり、第1章は、小林流四子局の布石として、第1型から第5型まで、黒の立場で解説されております。
また、復習としてそれぞれの型の要点のまとめもあります。
第2章は、「丈和名人、恐怖の下手(したて)いじめ:(上手(うわて)の立場から)」と題して、第1局が本因坊丈和vs喜曽八、第2局が本因坊丈和vs加藤小三郎、第3局が本因坊丈和vs神津伯太の3局の白の名局が納められております。
第3章は、「好機、逸すべからず:(下手(したて)の立場から)」と題して、黒の立場で解説されております。第1局と第2局が共に、本因坊秀策vs水谷縫次、第3局が岩佐銈六段vs犬養毅の3局の黒の名局が納められております。
小林光一先生の解説が、名調子でとても読みやすいです。
また、盤外雑談としてコラムが2つ掲載されております。
現代ではプロの置碁はありませんので、勝負碁としての置碁棋譜は、過去に遡らないと目にすることができません。
そういう意味で、このシリーズで紹介されている置碁の棋譜、及び小林光一先生の解説はとても貴重なものとなっております。
この「小林流必勝置碁(〇子局)」シリーズは、そういう意味で、私のおすすめの棋書となっております。
秀栄と木堂は清貧なり
本書より、「盤外雑談」をご紹介いたします。
ある年末、友達づきあいしていた犬養木堂(犬養毅、後の総理大臣)がしばらく顔を見ないがどうしているんだろうと秀栄宅を訪ねると、見るからにむさ苦しい姿で碁を並べています。
木堂:「どうした?」
秀栄:「イヤ、このとおりで着ていくものもありません。」
木堂:「ワシが作ってやった碁会はどうしてる?」秀栄:「金持ちは、わがままなものですから、私にはとてもお相手できぬと思いますので。」
と本因坊秀栄は、平気な顔だったということです。
この犬養木堂、秀栄に四子の碁だったというが、その清貧(せいひん:無理に富を求めようとはせず、行いが清らかで貧しい生活に安んじていること)ぶりも人の知るところ。
どうも政治家も棋士も昔の方がモノが大きい意味もあるのでしょうか。
晩年、五・一五事件で軍部の凶弾に倒れるのですが、首相官邸の自室を整理したところ、小さな折りたたみの碁盤と新聞碁の切り抜きが出てきたそうです。
本因坊丈和や本因坊秀策の置碁もご紹介したいところなのですが、今回は、コラムにも登場した犬養木堂先生の棋譜をご紹介いたします。
棋譜自体は、以前に「犬養毅首相の棋譜」でご紹介しておりますが、今回は、小林光一先生の解説付きでお届けいたします。
四子局の黒:犬養毅、白:岩佐銈(六段)1926年の対局です。
手合は、四三四の四子局です。
四三四とは、三局をワンセットでとらえ、つまり、4子局、3子局、4子局をワンセットで対局する昔の手合割であります。
四四四を四番勝ち越して、四三四の手合となりますから、犬養毅先生は、相当にお強いです。
以下、本書より
本因坊秀栄名人の清貧、孤高なのを愛して、友達づきあいをし、晩年は岩佐銈八段の無欲ぶりが気に入り、その教室に出没したそうです。
本局は大正末年、岩佐氏が六段の頃の作品。
(注、「飛び付き三段」とは:呉清源先生が来日時に秀哉名人他3名と試験碁を打ち、それに4連勝して飛び付き三段を認められました。)
黒:犬養毅、白:岩佐銈
四子局の黒:犬養毅、白:岩佐銈(六段)
(上図):白15まで
「黒6は小林流の五子局の第四型で細説しました黒イが最善最強です。」
「黒10は好着。白ロを予防しながら、白9をジロリとにらみ、遠く黒イの打ち込みを狙います。」
「白11でハと飛ぶのは、黒ニと打たれて局勢は簡明となり、白は面白くありません。」
との小林光一先生の解説であります。
急所のオキ黒20
実戦図、黒22まで
棋譜再生
(上図):実戦図、黒22まで
「黒16は急を要するところ、逆に白からここを曲げられては、黒が窮屈になります。」
「白17、白19とハネノビたとき、黒20のオキが急所。」
「岩佐先生もギャフンと参ったことでしょう。」
「木堂翁強し!」
「こんなプロ級の手を打たれては、上手(うわて)はたまりません。」
「白は泣く泣く21と打ち、黒に22とえぐらせましたが、この白21で22の方からオサえるのは次図になります。」
と小林光一先生の解説であります。
黒20のオキを喰らって、白は根無し草になってしまいました。
はっきりとした攻撃目標を下手(したて)に与えてしまい、素人目にも白が苦しそうです。
白21の参考図
棋譜再生
(上図):白21の参考図
白21とオサえると黒22のツケが手筋となります。
この図も白が根無し草で、相当に苦しいです。
黒10の一間トビが、ピッカピカに光り輝いております。
時を巻き戻して、白15が無理手でした。
白15では、16に曲がるのが本手(ほんて)でした。
16の地点が、黒白双方の急所となっておりました。
一刀両断の黒24
「名士の碁などというものは、非力なものと相場が決まっているのですが、この木堂翁は実戦の雄のようです。」
「黒24とツケて白を一刀両断じゃ!とやったのも好着。」
と小林光一先生の解説です。
白25の参考図
棋譜再生
(上図):白25の参考図
実戦の白25をハネ出すと図のような進行となり、左上の白一団が全滅いたします。
黒は好手の連発で、好スタートの序盤となりました。
老練な黒56
黒60まで
(上図):黒60まで
「黒56がなかなかもって老練な手です。」
「コウ材を消し、白さん、どうぞ、59とダメを連絡してくださいという意味です。」
「白としては、59の手でイとハネたいのですが、どう考えてもコウ材が足りません。」
「そこで泣く泣く59と連絡しましたが、黒は悠々と60に打って絶対安全の態勢を築きました。」
「これで、第一次の接触戦が終わりましたが、木堂翁は大いに戦って外勢を厚くし、白をダメに走らせて上々のスタートです。」と小林光一先生の解説です。
この碁は138手まで打たれ、黒の中押し勝ちとなっております。
本局、黒は序盤が特に見事な出来栄えで、お手本にしてよい一局です。と最後に小林先生は述べられております。
本当に見事な序盤でした。
四子局の名局だと思いました。
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コメントありがとうございます。
大切に読ませていただきます。