記憶の一局(小林光一さん)

2023/09/17

06.名局鑑賞

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*記憶の一局(囲碁将棋チャンネル)
囲碁将棋チャンネルの人気番組「記憶の一局」で、紹介した104局の中より30局(10人の棋士がひとり3局選)を選び、読み物としたのが「人生を変えた一局」であります。

人生を変えた一局」(囲碁人ブックス)囲碁・将棋チャンネル記憶の一局制作部


人生を変えた一局」、小林光一

囲碁人ブックス マイナビ

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黒:小林光一、白:加藤正夫

小林光一さんは、記憶に残る一局として、加藤正夫(王座)さんとの第11期名人戦七番勝負の第4局、1986年10月8日の対局を選びました。

*歴史に残る妙手(要約)
木谷道場に入って、私が12才のときは、加藤さんは18才ぐらい。一番打ってくれた兄弟子ですね。碁を打ってもらうのが一番の勉強になりました。

加藤さんとの対局は100局を超えていて、治勲さんの次に多いのです。タイトル戦も10回くらいやっています。それで私は、唯一加藤さんに負け越しているのですね。

私が大きなタイトルを獲れるようになってからも、加藤さんには、よくやられて、「天敵」だなんて言われていましたが、それは結局実力なんですよね。

このシリーズは、名人を獲った次の年の防衛戦で3連敗したあとの第4局でした。

この碁は「なんとか一矢報いたかな」と思ったところで、加藤さんに妙手を打たれてしまい、見事に負かされてしまいました。

本当に衝撃が大きかったですし、今でも鮮明に、その時の心境を思い出しますね。結局、4連敗で名人位を獲られてしまいました。

その2年後に名人位を取り返して、その後7連覇することができたのですが、毎年、「この期だけ、何とか勝たせてください」という気持ちでした。


序盤における二線のハネツギ

黒:小林光一、白:加藤正夫、第11期名人戦第4局、1986年10月8日

(左図):実戦図、黒31まで、(右図):参考図
棋譜解説図(数字、記号入り)
棋譜再生
棋譜解説図(数字、記号入り)

(左図)

右下隅の白8から白16までは、二人で何回も打っていたので、当時、「加藤小林定石」と言われていたそうです。

私(柿門)はこの当時は、囲碁からまったく離れていましたので、この定石は、ぜんぜん知りませんでした。囲碁に復帰して、コミが6目半に変わっていたのを知って、とても驚いたくらいですからね。

白26は定石だとその右斜め下のE13とケイマに外すのですが、「名人に定石無し」で白26と素直にビシっと打つのもありなんですね。

この序盤で、黒29、31と二線のハネツギを決めた理由は、右図で説明します。


(右図):参考図

逆に白から1、3と二線のハネツギを決められると、黒4が省けず、将来、白Aがくると、隅に手入れが必要になります。

白Aを利かされるのは、とてもつらいので、黒29、31を先着しました。と小林光一先生の解説があります。

二線のハネツギの価値は、局面によってずいぶんと変わるものですね。


模様に入るタイミングとその位置

(左図):実戦図、黒47まで、(右図):実戦図、白64まで
棋譜解説図(数字、記号入り)
棋譜再生
棋譜解説図(数字、記号入り)
棋譜再生

(左図):実戦図、黒47まで

小林光一先生の解説に「黒47は、白模様に入るタイミング」とあります。

この手は、AIの一手(無料のAIソフト)の最高評価である「神の一手」を得ました。

この呼吸と位置のバランス加減、とても勉強になる一手だと思います。

この局は歴史に残る大妙手が後に出現いたしますが、アマチュアにとっては、この黒47の方が勉強になります。

ここまでの序盤は、わずかではありますが、黒が優位に進めております。


(右図):実戦図、白64まで

黒63と左辺の攻防がいったん落ち着いたところで、白64と第2ラウンド開始です。

私などは、白64の右の三々入りを真っ先に考えるのですが、それは次図でご説明いたします。


三々入りはパンチ不足

(左図):参考図、(右図):実戦図、黒115まで
棋譜解説図(数字、記号入り)
棋譜解説図(数字、記号入り)

(左図):実戦の白64の参考図

「白1はパンチ不足。白7に続いて黒A、白Bでコウですが、黒Aを保留してCなどとコウをにらみながら策動する余裕を与えてしまいます。」と小林光一先生の高級な解説です。


(右図):実戦、黒115(A12)まで

「黒97の二線のツギは約14目。黒113も考えましたが計算できる手を選びました。白112で、aなら黒b。白112に黒bと受けると白cを打てる分、1目違います。」と小林光一先生の解説です。


歴史に残るヨセの妙手

(左図):実戦図、白▲116まで、(右図):参考図
棋譜解説図(数字、記号入り)
棋譜解説図(数字、記号入り)

(左図):白▲116(Q2)まで

白▲116が歴史に残る妙手となりました。

*談:小林光一先生
この碁は、白116の一手で負かされた気がします。

加藤正夫先生は、「殺し屋」のあだ名が有名ですが、実はヨセの達人。

半目勝負で一番勝っているというデータもあるほどなのです。

この碁を振り反っても手どころの追及が正確ですし、やはりヨセが強いですね。

結局、白の2目半勝ちとなりました。2目半というのは、プロにとっては手が届かないぐらいの差なのです。


(右図):黒117の参考図

黒1とがんばると以下白18まで、セメアイは黒の一手負けとなります。

この碁は230手まで打たれ白の2目半勝ちとなっております。


  • 総譜は、こちらより、つぶや棋譜2 Viewerで、ご確認ください。
  • 手順は、図の左下にある青文字の「棋譜再生」でご覧いただけます。
  • つぶや棋譜2 Viewer左上にある「自動再生」にチェックで再生致します。
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