購買層が限られておりますので、出版してしばらくすると絶版になってしまいます。
ゆえに、ここでご紹介した棋書もすでに書店の店頭にはないかもしれません。
その点はご了承をお願いいたします。
発行所:株式会社誠文堂新光社 発行者:小川雄一
はじめに
実力が向上するにつれて、置き石の数もしだいに減ります。
それが碁の楽しさの一つです。
三子局は一隅があいていて、そこでは白の主導権のもとに定石を打たなければなりません。その戦いが尾を引いて、多くは白に布石の主導権を奪われてしまうのです。
主体性を持って布石の構想を描けるかどうか。三子の効力を勝局に結び付けられるかどうかは、ひとえに出発点にあるといわなければならないでしょう。
二子局はもう、互先局とあまり変りません。ただし、わずかに上手のヨミが深いことは認めざるをえず、ことに地力がはっきり表われる終盤に、どれだけがんばれるかが勝敗のカギを握ります。
三子局、二子局は、互先局までの胸突き八丁。わずかな差にちがいありませんが、総合力で戦わなければならないところに、そのむずかしさがあるのです。
本書はそのむずかしさを、実戦の紙上経験でクリアーできないかと考えてまとめました。
対局者は、上手は一流棋士、そして下手も専門棋士あるいは後年専門棋士となった人々の若年時代です。
実戦ですから下手に悪手が少なくなく、上手ですら悪手を打たないでもありません。しかし、そうした混乱のなかで、どのようにして一本の勝ち筋を追及したかを見るのは、単なる机上の空譜よりも説得力があるでしょう。
三子局、二子局は、もう理想の手順を考える状況を飛び越えています。どの一局も、一手一手を見るより全体の考えかた、感じかたを掴み取っていただきたく思います。
平成20年初夏 囲碁編集部
(本書は2008年に発行された「簡明二・三子局の勝ち方」に4局分を加筆し、また本文に修正を加えたものです。)
置碁の棋譜はすぐれた教材
本書の特色は、「はじめに」に書かれているとおりであります。
「対局者は、上手は一流棋士、そして下手も専門棋士あるいは後年専門棋士となった人々の若年時代です」
本書に登場する対局者をご紹介いたします。(敬称略)
本因坊道策、本因坊秀和、本因坊秀策、本因坊秀甫、本因坊秀栄、本因坊秀哉、呉清源、木谷実、大竹英雄、加藤正夫、武宮正樹、石田芳夫、梅沢由香里、等々
これらの名人達の貴重な置碁の棋譜が掲載されてるわけです。
ほとんどの棋譜は、現在入手不可能でしょう。
プロの互先の対局を、我々アマチュアが理解することほぼほぼ不可能です。
しかし、置碁は違います。
いくら名人上手でも、一手で置き碁のハンデを縮めることはできません。
一手一手の積み重ねにより、少しずつ、一歩一歩、ハンデを縮めていこうとします。
そこが、互先と違って、我々アマチュアでも理解できるところなのであります。
置碁の棋譜は、アマチュアにとって、とてもすぐれた教材なのであります。
道策先生の生涯の傑作とされている二子局での1目負けの棋譜、呉清源先生の同じく先二先の二子局の1目負けの棋譜など、有名で世によく知られている棋譜もあります。
木谷実先生と大竹英雄先生の二子局など、当ブログにて名局として紹介済のものもあります。
どの対局をご紹介するかとても迷うところであります。
先二先の二子局、白:呉清源、黒:中村勇太朗
実戦図:白13まで
棋譜再生
実戦図:白13まで
約70年前の対局です。
現代では、どんなに段位が離れていようともオール互先での対局でありますが、70年前は、上手とって、とても厳しい手合でありました。
先ならまだしも、二子局はさすがに上手にってきつすぎる手合でしょう。
序盤は、白も黒も落ち着いています。
白11のトビも今見ると、現代風です。
さすがに、呉清源先生です。
黒10、12の一間トビも好感が持てますね。
AI定石現る
実戦図:白23まで
棋譜再生
実戦図:白23まで
黒6、黒14、黒18の一間受けは、当時の常套手段で、小ゲイマ受けが主流になったのは、ずっと後の時代となります。
呉清源先生は、白21とノゾキ、白23とすべりました。
まさに、AI時代の現代の定石です。
呉清源先生恐るべし!
AI流の呉清源先生
実戦図:白27まで
棋譜再生
実戦図:白27まで
白25、黒26と自陣を整形します。
ここで、白27!
これ、AIが打ちそうな手ですね。
ずっと前、AI登場前に並べた時と今とでは、感じ方がずいぶん違います。
呉清源先生と木谷実先生が、一番、現代のAIの打ち方に似ているような気がします。
呉清源先生の名局
黒46、48はワンセットで、当時の打ち方のようです。
白57は見習うべき好手です。
白75まで、白は無理をせず、堅実に一歩一歩、二子のハンデを縮めている印象です。
二子局のハンデ約20目の差が、白75まで、約10目まで縮まっております。
しかし、縮めてはいますが、プロの対局で二子のハンデは、あまりにも大きいです。
この碁は、247手まで打たれ、黒番の中村勇太朗六段の1目勝ちとなっておりますが、呉清源先生の名局として、有名であります。
三子局、黒:坂井秀至、白:石田芳夫
実戦図:黒16まで
棋譜再生
坂井秀至さんは、2010年に碁聖のタイトルを獲得しました。
2019年に医師となり、無期限の休場扱いとなっております。
この対局時は、中学生名人で、中学生の部三連覇という不滅の記録の持ち主であります。
黒10の一間バサミに対して、白11と上ツケで幻惑しようとしています。
コウで幻惑する白
黒24はスケールが小さく感じました。
白29のカケに黒30ツケコシ、黒32ハサミツケと中学生名人は強く果敢に戦っております。
置碁はこうでなくちゃいけませんね。
白45と上手の常套手段であるコウ仕掛けです。
コウ争いはどうしても、実力差が出てくるものです。
黒安全に終盤戦へ
コウは白71と白が打ち抜きましたが、黒は左辺の白を取ってしまいました。
白83の打ち込みには、黒が無難に対応しているように見えます。
黒100まで、黒に弱い石がなく、黒の厚みが勝っているので、白が追いつくのは大変に思えます。
黒100手以下略。この碁は、黒番の坂井秀至さんの10目勝ちとなっております。
三子局、黒:秀策11才、白:本因坊秀和
安田英斎は、本因坊秀策の幼名です。
秀策のお誕生日は、文政12年5月5日(1829年6月6日)、この対局は、天保11年(1840年)とあり何月かは分かりませんが、11才としておきましょう。
師の秀和との三子局です。
11才で秀和と三子局ですから、さすがに強いですね。
終盤のコウ争いなんかは、とても11才の小学生とは思えません。
271手完、黒番の安田英斎さんの1目勝ち。
やはり、先にご紹介した、坂井秀至さんの碁もそうですが、これから、のびゆく子の碁は一味違います。
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