棋書の紹介その59(小林流 必勝置碁 三子局)

2025/01/02

02.棋書の紹介

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こんにちは。こんばんは。

ご訪問いただきありがとうございます。

管理人の柿門です。(。・(エ)・。)ノ

今回は、「棋書の紹介その59(小林流 必勝置碁 三子局)」をご紹介いたします。


【「今日の格言」と「漢字の読み方」】

湯飲み格言「大きく捨ててシメツける」

漢字の読み方「忽ち」(たちまち):「そうち」ではありません。

突然。 またたく間に。


*初めにお断り
初めにお断りしておきますが、囲碁の本は、有名作家の小説にようにベストセラーになることはありません。
購買層が限られておりますので、出版してしばらくすると絶版になってしまいます。
ゆえに、ここでご紹介した棋書もすでに書店の店頭にはないかもしれません。
その点はご了承をお願いいたします。



著 者:小林 光一  編集記述:中山 典之 

発行者:千田 敬 発行所:株式会社独楽書房




小林流必勝置碁三子局


はしがき(要約)


*はしがき(要約)

三子局は、四子局以下の置碁とはいくぶん違った性格があります。

碁を習いはじめのときは、誰に向かっても九子局です。

だんだんと上達して七子局になり五子局になり、いよいよ目指す碁敵に三子になったとします。

三子置いて「お願いします」と頭を下げ、さて思うことは、何と盤面の広いことか。

白がまず一隅を占め、黒がこれにかかる。初めて体験する、白の主導権下における戦いです。

まさに楽しき「未知との遭遇」です。

三子局では、積極的な心構えがまず大切。

二、三手もぬるい手を打てば置石の力はすぐに吹っ飛んでしまうのですから、守りに守る三子の必勝布石などは、あろうはずがありません。

本書は、もし私が三子置いたらどう打つかという主題のもとに書かれています。

だから、私が実戦で用いる定石、布石も、難解でない限りにおいて、どんどん採用しました。

このように打てば、三子置く限り必勝疑いなしと、小林光一の名において宣言するものです。

1979年11月

小林光一



本書の構成

第1章:小林流、三子の布石(第1型から第8型)

第2章:古名人、入神の打ち回し

    第1局(本因坊 道策)、第2局(本因坊 道知)、第3局(村瀬 秀甫)

第3章:現代名手、少年時の三子局

    第1局(本因坊 秀栄vs林 文子 初段 16才)

    第2局(本因坊 秀哉 名人vs木谷 実 初段 16才)

    第3局(本因坊 秀哉 名人vs呉 清源 三段 15才)

盤側余話(コラム)

囲碁上達法

歴史上の名手たち


第1章は、小林光一先生が三子局の布石を8型に分け詳細に解説してあります。

本書が発行された1979年11月現在、小林光一先生は27才です。

本書発行の2年前に初タイトルとなる天元位を獲得。本書発行の2年後に二度目のタイトルとなる十段位を獲得することとなります。期待の若手のホープといったところでしょう。

第2章は、古の名人たちの三子局を白の立場で解説されております。

第3章は、黒の立場で、呉清源先生、木谷実先生の3子局を解説されております。

この小林流 必勝置碁シリーズは、プロの置碁が楽しめるのが私はたいそう気に入ってます。

プロの互先の対局を見てもほとんど理解できないですが、置碁であれば、置石がある分、盤面が狭くなっているので、アマチュアには分かる部分が多いように思えます。

【関連棋書】

歴史上の名手たち

盤側余話

歴史上の名手たち(明治以前)より

有史以来数百年、誰が囲碁界の最強者か?

これは、時代を問わず、ジャンルを問わず、話題に上がります。

アントニオ猪木とジャンボ鶴田はどっちが強いとか、スタン・ハンセンとブルーザー・ブロディはどっち等々。

小林光一先生は、以下の順位をつけました。

第1位:本因坊 道策(ほんいんぼう どうさく)
 これはもう文句なく第1位。その棋譜を並べていると神算は驚くばかりで、時間の経過を忘れてしまいます。

第2位:本因坊 秀策(ほんいんぼう しゅうさく)
 私は小さい時から秀策全集を並べて勉強しました。堅実無比な碁で、秀策先生が先を布いたら、道策先生も閉口されるでしょう。

第3位:本因坊 丈和(ほんいんぼう じょうわ)
 古今無双の怪力で楽しい碁風です。私は丈和全集が大好きです。

第4位:本因坊 秀栄(ほんいんぼう しゅうえい)
 名人中の名人に第4位は失礼ですが、どうにもやりくりがつきません。

第5位:本因坊 秀甫(ほんいんぼう しゅうほ)
 これも秀栄くんより下とは何事ぞと抗議されましょうが、早く亡くなられてご損をされました。

その他、道的、道知、秀和。なんとも頭の痛い所です。


第3章:現代名手、少年時の三子局


第2局(本因坊 秀哉vs木谷 實 16才)


実戦図:黒20まで

棋譜解説図(数字、記号入り)
棋譜再生

実戦図:黒20まで

1925年7月の公式手合です。

当時の日本棋院の定式手合(後の大手合)には、本因坊秀哉名人も出場され、二子局、三子局も打たれていました。

当時、木谷實先生は16才で初段。初段と名人の正式手合が三子ということです。

黒4カケはAI推奨の打ち方です。

黒20まで満点のスタートだと思います。


300年前の定石

古来の定石:黒14~黒34

棋譜解説図(数字、記号入り)
棋譜再生

古来の定石:黒14~黒34

小林光一先生は、実戦の黒14で上図の黒14ノゾキを示しました。

「黒14とノゾくのが手順。白19、21から23と利かしにきたとき、黒24から28までと、しゃれたツギ方をしながら白を攻めることができます」

「白29、31は手筋。こうして中央に出ますが、黒も32、34と簡明です」

この手順は昔からある定石で、300年前の有名な本因坊道知と安井仙角の争碁の一局目。道知ヨセの大逆転にも現れたそうです。

現代でも通用する定石のようですね。


木谷少年、満点で序盤戦終了

実戦図:白87まで

棋譜解説図(数字、記号入り)
棋譜再生

実戦図:白87まで

白はあの手この手と手を繰り出しますが、木谷少年はまったく乱れません、

白87まで、置石3つのハンディはいささかも縮まっておりません。

白87の三々入りは、一刻の猶予もならずといった感があります。


最後の正念場

実戦図:109まで


実戦図:109まで

白109とツケてきました。

最後の正念場です。

しかし、ここでも木谷少年は一糸乱れず打ち進め、完勝となりました。

この碁は、156手まで打たれ、黒番の木谷實先生の中押し勝ちとなっております。

3子局の黒の名局ですね。


第3局(本因坊 秀哉vs呉清源 15才)

実戦図:白21まで

棋譜解説図(数字、記号入り)
棋譜再生

実戦図:白21まで

1930年1月1日元旦から時事新報の紙面を飾った碁とあります。

手合割は、二三二の三子局(下位者が3局のうち2局を2子番、1局を3子番とする)です。

呉清源先生の残っている棋譜で三子局は、この一局だけだそうです。

白9、13が秀哉流です。本因坊秀哉名人の棋風はまことにきびしく、ゆるみのない手法で知られており、二子局、三子局の名手として有名です。

白19はどっしりと落ち着いています。

黒20は当時としては斬新だったのではないでしょうか。

白21は、三子局の上手の打ち方で参考になります。


秀哉名人の講評

実戦図:白33まで


実戦図:白33まで

黒22、24は、俗な手に見えます。

秀哉名人の講評

「黒30ではイと高く構え、次に黒ロ、白ハ、黒ニとする中央進出を含む方がよい」

「白33の打込みは時期尚早で、幾分無理を免れぬ。白ホのヒラキが正しい」


敗着は白107

実戦図:白107の秀哉名人の評:白1から3


実戦図:白107の秀哉名人の評:白1から3

秀哉名人の講評

「白△(107)を敗着と断ずる。ここでまず白1にアテて黒2を交換し、転じて白3と曲がって黒の進出を阻止すれば、勝敗の前途にわかに測知しがたい形勢である」

この碁は、249手まで打たれ、黒番の呉清源先生の11目勝ちとなっております。

呉清源先生は、3子局ということもあり、堅く打たれた印象がありますが、完勝でしょう。

秀哉名人と呉清源先生の対局は、この三子局と二子局の4局はすべて、呉清源先生の勝ち。

呉清源先生の先番(コミ無し)で打たれたあの超有名な三々星天元の布石の一局は、秀哉名人の2目勝ちとなっております。


  • 総譜は、こちらより、つぶや棋譜2 Viewerで、ご確認ください。
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