ダイレクト三々はコロンブスの卵
プロの対局では、毎局のように出現している、星へのダイレクト三々ですが、ご存じのようにこれは、AI出現以降に現れた定石です。
それまで、世界中のプロ棋士が誰も打とうとしなかったわけですから、人間レベルの完全な盲点だったと言えます。
まさにコロンブスの卵です。
私は、これを最初に見た時は、良い手とは全く思いませんでした。
三々入りして数目の地を稼ぐのに対して、外側の厚みの方が圧倒的に勝ると思い、ダイレクト三々を真似ようとは一切考えませんでした。
たぶん、ほとんどの方が同じ考えだったのではないでしょうか。
それでは、何故、それまで打たれなかったのかを解説したいと思います。
旧三々入りの定石
棋譜再生
旧定石を覆す発想が必要
上の図をご覧ください。右上隅の星に白1と三々に入り、図が昔の三々入り定石です。
この旧定石の別れを見て、みなさんはどう形勢判断をいたしますか?
答えは、黒良しです。白の8目ほどの地と黒の外勢(がいせい)を比較すると黒の外勢のほうが勝ります。
この形勢判断は、間違ってはいません。
このように定石どおりの進行になれば、黒の厚みの方が勝るので、これまで、この三々入りが打たれることはありませんでした。
人間には、この旧定石をひっくり返す発想が出てこなかったのです。
形勢判断が大事
囲碁は形勢判断が大切です。形勢判断とは、上の図を見て、黒と白のどちらが優勢かを判断することです。
たとえ、30手先までを完璧に読める能力があり、そのヨミどおりの進行になったとしても、その30手先の局面の形勢判断が出来なければ、もしくは、形勢判断を間違えてしまえば、意味がありません。
最初のころ、私は、上の図を見て、黒が良いと理解することができませんでした。たとえ、8目であろうと黒の侵入を絶対に許さない確定地の方が安心できて、打ちやすかったのです。
形勢判断は、井山さんでも間違えることがありますから、局面を見てどちらの形勢が良いかを判断することは、とても難しいものなのであります。
アマチュアは、上のように答えが出てる図をひとつひとつ、丸暗記するしか方法は、ありません。
私はこの図を見て、何度も何度も「黒の外勢の方が勝ってる」「勝ってる」と自己暗示をかけて、この形の形勢判断ができるようになりました。(笑)
当然のハネツギが盲点でした
強い石とは、攻められることがない石のことです。
最強の石とは、生きてる石です。何故なら、どんなに攻められても、囲まれても、死ぬことがないからです。
旧定石の外側の黒石は、強い石です。
この黒を攻めようとか取りに行こうとかを考えるのは危険な思想です。相手は強いのですから、当然のこと反撃にあいます。攻めの対象は、弱い石にしましょう。
では、なぜ、この黒石は強いと言えるのでしょうか?
ここが重大なポイントとなります。
その答えは、黒12のカケツギがあるからです。
このカケツギにより、黒の眼形が豊富となりました。つまり、容易に2眼を作れる形になったのです。
旧定石の白側の欠点は、白9、11のハネツギにあったのです。
白のハネツギは、自らの生きを確定し、かつ、先手を取れるので、当然の一手であると人間は信じてきました。ここに疑いの目を向けることはなかったのです。
しかし、生きを確定しかつ先手を取る白9、11よりも、黒12とカケツギされる方が罪が重たかったのです。
いにしえよりこの判断が人間には、できませんでした。
AIの新手は二線のハイ
AIの新手は二線のハイ
(左図)
AIによる新手は、白9の二線のハイでした。
「二線は敗線」という格言があります。二線をハッても1目しか得ないので、二線をハウのは最小限に止めなさいと言う教えです。
白9は、余計に一本多くハイを打つことになりますので、人間には浮かぶことがないものでした。
白9のハイを打つことにより、ハネツギを打つことなく、白は生きています。
また、このことにより、黒は、Aの断点が生じることになりました。この断点があるため、黒は強い石とは言えなくなりました。
(右図)
黒の改善策が、黒1のノビです。
弱点となる断点を作らないための改善が黒1のノビです。白はすべってひと段落、ここまでが定石です。
余談ですが、黒の3子は強い石とみなされているので、プロの対局では、黒3ですぐに右辺にヒラくことはなく、他の大場にまわることが多いです。
このようにして、AIにより実に簡明な新定石が誕生いたしました。
経緯は単純と言えば単純ですが、人間は、これまで誰ひとり気がつくことがありませんでした。
AIの出現により囲碁の大革命が起きましたが、その象徴が、プロの対局に毎局のように現れるこの新定石である、ダイレクト三々であります。
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