「秀行 百名局」 著者:高尾紳路 誠文堂新光社
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高尾さんの前書き
子供のころから「つまらない碁を並べるより、おれの碁を並べろ」といわれ、繰り返し並べてある程度知ってるつもりですが、一局一局の背景はほとんど分かりません。とくに先生の若いころのことはまったくお手上げです。
そこで、秀行先生の打碁集の記述もされて、古くから秀行先生とおつきあいのある観戦記者・囲碁ライターの秋山賢司さんに協力をお願いしました。
百局を決めるのは難しい作業でしたが、これも秋山さんと相談して決めました。
勝った碁だけでは真の先生を伝える事にはならないと判断して、特にポカで敗れた碁を多くしたのは私の注文です。
晩年の碁に一局あたりのページ数を増やしたのは、晩年こそ何ものにもとらわれない自由な考え方が盤上に強く表現されているからです。
第1章は少年時代からトップにたつまで。
第2章は名人戦を中心に覇を競った時代。
第3章は棋聖戦を中心に若手と競った時代。
藤沢先生に少しでも近づいて、もっと強くなるのが私の夢です。
解説の部分を飛ばして、ただ並べるだけでいい。
そこで何かを感じられるはずです。
その瞬間に強くなるのだと思います。
2009年12月 高尾紳路
秋山さんのあとがき
高尾紳路さんに初めて会ったのは、高尾さんが小学校4年の秀行合宿のときだったと思う。
依田紀基さん(当時20才)が合宿の主力メンバーだった。
高尾さんが一番のちびっ子で、お母さんに付き添われての参加だった。
藤沢先生の講評を聞くときは常に一番前。
「紳路、紳路」と藤沢先生は大変なかわいがりようだった。
それから4年後、高尾さんは入段した。
「入段が1年遅れた。1年前に入段する力は十分あった。紳路を鍛えて、李昌鎬(イ・チャンホ、当時の世界最強の棋士)に対抗させようと思ってる。」と秀行先生はおっしゃっていた。
じつに仲のいい師弟だった。研究会、合宿では藤沢先生のそばに必ず高尾さんがいた。
それだけに藤沢先生がいよいよあぶないとなってからの高尾さんの心労は大変なものだったと察する。
連日病院に泊まり込み、そこから日本棋院の対局にかよった。5月7日も名人戦リーグを打って病院に戻った。
藤沢先生の最期を看取ったのは翌8日早朝だった。
秋山賢司
秀行百名局の紹介
この本は、私が所有している本のなかで、一番高額(8,000円)なものです。
秀行先生の打碁集であり、それを高尾さんが選局して、また、解説であれば、購入をためらう理由はありませんでした。
棋譜も大きく表示されており、とても見やすい構成になっています。
もちろん、解説は愛情のこもった素敵なものです。
また、巻末にある「藤沢秀行年譜」も細かく書いてあり、昭和の囲碁の歴史がわかるかのようで、これだけでも価値があると思います。
最初の秀行先生の誕生をご紹介します。
藤沢朋斎先生との叔父、甥の関係は、この「異母兄弟が十数人」からきているようです。
最後の100局目を紹介
今回、ご紹介する局は、正直迷いましたが、最後の100局目にしたいと思います。
秀行先生が最後の王座のタイトルを失ったシリーズの第1局です。
1993年の対局とありますから、秀行先生は68才となります。
王座のタイトルをこの年齢まで防衛し、このシリーズが3期目の防衛戦でした。
前年の挑戦者は、当時の第一人者である小林光一先生でした。当時、棋聖を7連覇、名人と碁聖を5連覇と防衛し続けており、最強の挑戦者と言えます。
その最強の挑戦者を退けたのですから、あっぱれとしか言いようがありません。
黒:藤沢秀行、白:加藤正夫
今回の挑戦者は、加藤正夫九段。当時、加藤正夫さんは、この王座のタイトルを通算10期、8連覇の実績があり、名誉王座の称号をすでに手にしておりました。
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2つの旧定石
当時のコミは、5目半です。
- 右下隅の二間高バサミ定石に、白8のコスミ。
- 左上隅の一間バサミの三々入りに白16の方からのオサえ。
この2つの定石は、現在見ることはないです。
1は、ずいぶん前に見られなくなりました。
2は、AI登場後に淘汰されたと思っております。
したがって、白22、黒23の交換を藤沢先生はありがたいと見られたのではないでしょうか。
藤沢先生は、「黒25はAだったか。実戦は白30が好点」とのことです。
白52は利かされ
私なら黒Aを選ぶでしょう。左辺は白がもう一手打っても、全部が地になるわけではありません。
白34と応じられると黒35以下隅に替わるくらいですが、白44を利かされたのがシャクなのです。
黒51は好見当。
「白52は不可解。大変な利かされである。白57と押すべきであろう」
この評は当然でしょう。白52と受けるなら、その前に白55からのハネツギを決めるべきでした。
逆にハネツいで黒57・59となっては分かりやすい。黒63も堂々たるトビです。
白64、66は好タイミング。白68をコウダテで打って、右上に味を残しておきたいのです。
(左図:白100まで)
(注:盤面図の手順は3桁表示しないようです。百の位が表示されていません。)
右辺の薄みを狙っています。
黒79が厚い。
黒89にツケコしてゆるめなく決めます。
白100までは、藤沢先生の名局。
ところがひょんなことから逆転します。
秀行先生の最後のポカ
一種のポカ。
10目近い損です。
101を打たずに実戦の黒103から105なら、盤面で8目から9目の勝ちは動かなかったのです。
「このポカはさすがにこたえた」
第2局、第3局も敗れて失冠。
これが最後のタイトル戦となりました。
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大切に読ませていただきます。